北前書店の新刊、『越中万葉物語 あゆの風』(越野文香)を刊行しました。
天平十八年、夏。都からひとりの青年貴族が、越中国——今の富山県に赴任します。大伴家持、二十代。のちに『万葉集』をまとめ上げることになるこの青年は、雪深い北の国で何に出会い、何を失い、いかにして「名もなき声の聞き手」となったのか。
泥田で出会った土地の娘。書物には載らない、生きた言の葉。海から吹く「あゆの風」。弟の死と、雪の夜の祈り。そして、万代(よろずよ)の約束——。実在する万葉の歌八十一首を織り込んで描く、家持の越中五年間の物語です。巻末には全八十一首の出典一覧と、越中万葉ゆかりの地を歩くための付録を収めました。
越中万葉物語 あゆの風
著者: 越野文香
発行: 北前書店
形式: Kindle版(電子書籍)
価格: 【価格】500円(税込)
発売日: 2026年9月21日
この秋、高岡から氷見へ——万葉の道をご一緒に
刊行を9月末に定めたのには、理由があります。10月2日(金)から4日(日)まで、高岡市で「高岡万葉まつり」が開かれます。古城公園の水上舞台で、万葉集全二十巻・四千五百余首を市民がリレーで詠み継ぐ「朗唱の会」——四十年近く続く、全国でここにしかない祭りです。歌の声に触れる前に、あるいは触れたあとに、この物語が家持の五年間への旅の道連れになれば、これに勝る喜びはありません。
そして、まつりの街・高岡から氷見線に乗れば、物語の舞台はすぐそこです。8月の大雨からの復興へ向かう氷見のまちを、この本が、訪ねるきっかけのひとつになりますように。当店の読み物「越中万葉をあるく」もあわせてご覧ください。
本書は、東京富山県人会連合会創立百十周年記念誌『銀嶺の奔流』に続く、北前書店の二冊目の本です。先人の熱を、物語の帆に。これからも富山の物語を、一冊ずつ届けてまいります。

